ウェブ講義1【事業スコープって何?:後編】
事業スコープの設定をするにあたり、大切なことを次のように3つに整理してみます。
(1) 自社の経営方針と合致させる
当たり前のことですが、この事業は本当に自分の会社のやるべきことに合っているか?ということをしっかり考えることが大切です。よくコア技術から近いとか遠いとかいうように、そういう尺度もありはありです。しかし、ここでは事業コンセプトであったり、フィロソフィー(物事の考え方)であったり、そういったものが自社にあっているのかというのを考えてみます。自分ひとりで考えるよりも様々な視点を持つ人とブレインストーミングしていく方法もあります。
(2) 対象市場を具体的に考える。
対象市場はどこでしょうか?と尋ねると、わりとぼやっとした答えが返ってくる場合があります。「当社は全社の売上が兆を超えている会社なのだから、新事業といえども少なくとも3桁の億がなければならない。しかもそこでトップシェアをとれなければやる意味がない」という話を聞いたりします。それはたとえば社長とか事業を評価する人がそういうのであれば、あり得る言い方かもしれませんが、驚くことに事業をやる側の方が真面目にこういうようなことを言っている場合があります。もっと現実を見て、つまり「●●であるべきだ!」ということではなく、具体的に対象市場は何かと言うことを明確に決めることです。
そうすればその規模が見えてきます。つまり航海する海の大きさと困難度が見えてきます。よく「これはまったく新しい技術だから、市場は今はない。誰も予想ができない」と言うケースがありますが、この場合は非常に危険な航海が待っているということになります。なぜなら、自分が航海する海がまったくわからないということになります。こうなるとギャンブルとも言えます。少なくともステージゲート法を利用して事業を成功に導こうという方は、この考えはないと思います。こような事業が存在しないとは言いませんし、ギャンブル的にやった事業は成功しないとも言いません。しかし、ステージゲート法で考える事業と、それとはまったく違うものであります。とにかくまず対象市場を具体的にきちんと想定しましょう。
(3) ゴールはどこかを設定する。
前編で航海を例に申しましたが、どこに向かって行くのかということは当然ながら決まっていなければなりません。東京から出て、サンフランシスコに行くのか、ジャカルタに行くのか、下田に行くのかでは、装備の準備が全然違います。そもそも乗っていく船が違います。対象市場がとても大きくて、さらにそこでトップシェアをとるということであれば、それなりの船と装備と人員と知識とスキルと経験と・・・・・が必要です。
よく出くわすのは大きな企業の新規事業だから、大きな市場でトップシェアをとれという号令のもとに、とても小さい組織でミニマム投資で始めているケースです。これではゴールと船が合致していませんので、当然ながら結果がでません。まずはゴールをどこにするのか決めましょう。それがトップシェアでもニッチ市場の高収益でもよいのです。そこから船の大きさ、装備などが明確になってきます。
あなたの準備はいかがですか。
これらがしっかり見えるようにして、事業を組み立てていくと、途中でこれは違う、と思ったときにも、ここに戻って整理をして再度組み立てていくことができます。事業スコープを整理するのは、難しいという人もいれば、簡単だという人もいて事業それぞれ、人それぞれだと感じます。どうしても自分ひとりでは埒があかない、というときは、私たちがいつでもお手伝いできます。しかし、まずはこの「ウェブ講義(旧:考える連載コラム)」で、事業開発の全体像を掴むことができるようにお伝えしていきます。
これをお読みくださったこのご縁を機に、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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