事業に「共感してもらう」
新規事業実務研究会での事業開発の考え方は、事業をいくつかのステージに分けることを基本としています。ステージとは、事業に必須のパーツのようなものです。それらのステージとステージの間にゲートを設け、そこで次のステージにいくのか、現在位置しているステージの完成度を今一度上げるのかを考えていきます。何度も同じステージを検討し直して次に進むことももちろんあります。
私たちはこの理論を実際にある企業の新規事業に応用しました。製造業で100億円規模の事業にするには、設備投資の意思決定が避けて通れません。いきなり大規模な投資をして回収できなくなって、いわゆるドツボにはまるのではなく、階段を一段づつ上り、必要になれば必要な投資をしていくべきです。これは誰もが考えることで、特に企業の上層部の方々はそう考えます。
もしあなたがすでに事業で大成功して有り余るお金を持っていて、これから新しい事業を始めようということであれば、思い切りよくお金を投じるかもしれません。しかし、企業の中の新規事業の場合、投資の元になっているお金は企業のお金であり、株主のお金であり、他の従業員の方々、先輩方が血と汗で稼ぎ出したお金なのです。それを現在の経営者はいかに無駄にしないで、未来につなげなければならない、と考えています。
さらに、企業の経営者は一人ではないのです。事業企画、営業、管理、生産、財務等々、いろいろな観点から考えられていて、一人の人のミスリードを防ぐ仕組みになっています。たとえ社長と言えども、周囲の反対を押し切って、自分だけの意見で勝手に進めるわけにはいかないのです。だから、誰が見てもよくわかるように「見えるようにする(見える化する)」ことが必要なのです。
ビジネスのスピードは、この10年くらいの間に著しく早くなっています。日本企業は意思決定が遅く、グローバルの競争の中では勝てないと言われてきました。確かに、多くのスタートアップ企業が育っているシリコンバレーをみると、物事の決定が非常に早く、その決定を受けたあとのアクションもものすごい速さで行われるのを感じます。それに比べると、日本では本当に意思決定が遅いと思わざるを得ないことのなんと多いことか。
しかし、どちらがいいとか悪いとかということを議論している暇はありません。事業をやっていく(と決めた)人間としては、それぞれの場面で適したやり方を模索して対応していかなくてはならないのです。
私が企業の中で実際に新規事業をやってきた約20年の間を振り返ってみます。
例えば100個のなんらかのタスクが存在していたら、常に60個くらいは不条理、不可解、不愉快なことです。担当者としてのミッションは文句を言うことでありません。問題点をまとめて政策提言することでもありません。ただただ「事業を推進」しなければならないのです。そのために、企業の中で意思決定される仕組みを熟知し、そこに適切な手法を講じて結果を得るのです。
方法論はたくさんあります。課題に対して議論を重ねたり、見えてきた問題の芽をなんとか摘み取ったり。そのほかには、たとえば「料亭」で秘密裏に決めてしまうということも。時にはこれらも対処療法としてありかもしれませんが根本的な解決策になりません。重要なことは、企業の中にいる「組織人」としての考え方、立ち居振る舞いをもって、自分が任された新規事業を推進し、早く成果を出すことです。そのためには、事業のすべてを見えるように(見える化)して、多くの関係者に短時間で効率よく理解してもらい、「共感してもらう」ことがカギとなります。このカギが企業内の事業にとって常に大きな推進力となります。(S. Takita)
具体的にどうしたらよいのかわからないという方は、いつでもご連絡ください。一人でも多くの新規事業担当者が成果を出せるよう、私たちがサポートいたします。