ビジネスと海釣りの共通点
自社がビジネスをしている、あるいはこれからしようとしている市場について、無頓着な会社が少なからずあります。「市場がどうのこうの言ってる暇があったら、とにかく当たって砕けろ!足で稼げ!」という檄が上層部から営業部門にとんでいるケースもあります。
私が経験したのは、半導体の事業を始めたときに、市販の半導体工場年鑑といったような出版物にのっている会社をあいうえお順にあたっていくべきという作戦を、真面目な顔で話している人がいたことです。
この人は工場の人だったので、自分がやるわけではないから単なる他人事として語っていたということもあるし、そういう仕事をしたこともないから仕方ないと言えば仕方ないですが、とにかくびっくりしました。私たちの組織はその人もいれて4人しかいなかったからです。
もしその通りやるとしたら、事業スタート直後でたくさんのことをやらなければならないという状況の中で、関われるのは2人です。その二人が他の業務も並行してやるのですから、現実的ではない方法です。しかし、この人は真面目にこう考えていたわけです。
ある経営者は海釣りが趣味で、釣りと事業をたとえて話していました。
釣りをするときどうやるか?
まず、狙う魚種を決めます。この季節のこの海ならこの魚が旬だと。そしてその魚はどこにいるかを調べます。とはいっても、広い海の中が見えるわけではないので、そこがまず釣れる場所であるかどうか、が決め手になります。
どんなに釣りの天才でも、魚のいない海に釣り糸をたらしても絶対釣れません。反対にどんなに素人でも魚がいれば釣れる可能性はあります。その位、「魚のいるところ」で釣りをするのは重要なことです。
釣りの話は続きがあります。広い海の中は見えないのだから、「魚がいるだろう」と思われる海域、そして時間、を決めます。釣りをやられる方ならお分かりだと思いますが、この場所と時間は想像よりもはるかにピンポイントです。そしてその根拠はいろいろな情報がもとになっています。
漁師さんの情報とか、まわりの人の釣果だとか、新聞の「ある部分」を見るとか、などなど。つまりこの場所と時間を決めるのは、情報戦なのです。もちろん経験とそれにもとづく勘も必要です。そして場所と時間を決めたら、ターゲットとする魚が食いつく餌としかけを決めます。そしてそれを垂らすのですが、仕掛けのよしあし、餌のつけ方でもうまい人と下手な人では結果に雲泥の差がでます。
魚が食いついてきたら、糸を切られないように、はずれないように吊り上げます。一番失敗するのが、目前で「バラす」ことです。こうして釣りの結果を得ます。これがビジネスと同じだというのです。いかがでしょうか。
この釣りの話では後半、つまり魚が食いついてきてから吊り上げるまではテクニックのお話になります。ビジネスで置き換えた場合については、別項目で考えていくことにします。前半の部分、情報戦により「狙った魚のいる場所と時間」を定めるのは、ビジネスでは対象市場をきちんと把握することに他なりません。
釣りで考えると実に当たり前のことが、ビジネスだと当たり前ではなくなっています。「どんなに釣りの天才でも魚のいない海に釣り糸たらしても絶対に釣れない」という言葉で、新事業の対象となる市場を今一度みてみましょう(テクニックのお話しは別のコラムで書きますのでぜひチェックしてください)。