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新規事業の事業見える化コラム

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執筆者の写真高材研

ステージゲート法で最初に整理する3つの根拠

スコープの設定で対象市場を具体的に想定したら、市場規模、成長率、安定性のこの3つについて、根拠を明確にしていきます。


まず、市場規模が数字で把握できていますか。

これを自信をもってやれるという人は少ないのではないかと思います。既存事業で長い歴史がある事業であれば、いろいろな文献、調査、業界などから市場規模の根拠がわりとはっきりしているでしょう。でも新規事業の場合には、そういうデータがない場合が多くあります。たとえば、ノートパソコンの市場規模であればいろいろなデータがあります。スマホの市場規模もあります。それらの中にある半導体デバイスの市場規模はどうでしょう。これもあります。ではその半導体デバイスを作る半導体製造装置の市場規模はどうでしょうか。これもまとめられています。では、その半導体製造装置に使われる部材で、新素材と呼ばれるXの市場規模はどうでしょうか。これになるとどこを探してもデータがありません。

こういう場合、どうしたらよいのでしょうか。


一つの方法として、その業界にいるプレイヤーの売り上げ規模を足すというやり方があります。しかしグローバルなプレイヤーを対象にすると、調べるだけでも大変で時間がかかることもあります。大企業の一部門としてXを扱っている場合には、その大企業全体の売上は公表値から拾えますが、一部門の売上は公開されていなかったりします。こういう場合でもなんとかしてそこの売上を想定しなければなりません。なかり推論が入ってしまうのはやむを得ないところではありますが、その推論の根拠は必要です。


次に市場成長率です。これは市場規模は把握よりもっと難しいかもしれません。上述のXの場合だったら、まずX自体の市場成長率など誰も計算していないことになります。その場合にはXをとりまくもう一段大きい市場、たとえば半導体製造装置の市場成長率や、使用部品ごとの市場成長率などを入手して、そこからロジックをつくって推論するしかないでしょう。事業をやる上で、市場が成長しているということは非常に重要なことです。市場が成長さえしてくれていれば、仮にトップシェアでなかったとしても事業は成長できる可能性が高くなります。事業スコープで「トップシェアをとる」というゴールを設定したとしても、そんなに簡単にゴールに行けるとは限りません。紆余曲折あるでしょう。その場合でも市場が成長してくれていれば、いったんしゃがむこともできるし、コバンザメ作戦で様子を見て、それから一気にひっくり返すといった作戦もできます。成長しているということは競争も激しいということではありますが、日本の高度成長時代に多くの会社が伸びていったのをみれば明白です。


逆にシュリンクしている市場で勝負するのは大変厳しいものがあります。事業というのは成長論がベースにあります。つまり事業は成長しなければならないのです。ずっと赤ちゃんのままでいいということではないのです。シュリンクしていく市場で成長するということは、ウルトラCの作戦が必要です。そのウルトラCを考えだすより、成長している市場に出ていった方がはるかに事業の成功確率が高くなります。最悪なのは、市場がシュリンクしているのに、競争だけは激しいという場合です。自社の事業がおかれている市場が一体どういう成長をしているのか、それをしっかり把握することが事業戦略、事業計画の正確さのもとになります。これから航海する海の状況を可能なかぎり調べて、潮流に上手にのって航海するように見定めるということです。

そして、その市場は安定しているのかという点も大事です。企業内で事業をやっている場合には、その組織にいる人の給料は所属している企業から出るケースがほとんどですが、始めた事業の中で給料が決まるという厳しい社内ベンチャーのケースもあります。もし、たとえば会社を退職して退職金と貯金を使って自分で事業を始めたら、「安定している」ということがいかに大切かを身に染みてわかるはずです。そうでないと、死んでしまいますから。


たとえば今ドカンともうかってもその先どうなるかわからないという、常に不安な状態にいるよりも、10年間コンスタントに毎月売上があがる契約を確保できていることの方が、はるかに必要とされるのです。企業内新事業だと、そのことが身に染みるほどではないと思いますが、それでも事業が成功するかどうかは企業内のご自身の生命には死活問題になるはずです。だから非常に重要です。その場合、そもそもの市場が非常に不安定だと、事業のハンドリングが非常に難しいことになります。だから市場が安定しているのかどうか、もっというと、例えば数カ月後になくなってしまうような市場ではないのかどうか、ということはきちんと把握しておく必要があります。


これらのことは、なかなか一筋縄で把握できないケースもあります。

そういう場合には、信頼できる市場調査のプロの活用も視野に入れましょう。彼らは覆面調査もやってくれるので、自分では動けないところの情報も入手できることがあります。そこから先の推論のロジック作りは、ここでも順番に紹介していきます。


※基礎的な考え方を押さえることや実際の実務の遂行をするには、新規事業の経験が豊かなプロの助けを借りることが、事業の推進力を高めるきっかけになることもあります。

当会事務局にお気軽にお問い合わせください。

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